【1】心の声「感謝してる、でも苦しい」
「育ててもらったんだから」
「いろいろしてくれてるし、ありがたいことはわかってる」
そう思ってる。ちゃんと、思ってるつもり。
でも、いざ親と話すとモヤモヤしてしまう。
ありがたいと思いたいのに、なぜかイライラする。
話したあと、ひとりになってからドッと疲れる。
「どうしてこんなふうに感じるんだろう」
「もっと素直に感謝できたらいいのに」
——親のこと、嫌いじゃない。
でも“感謝しなきゃ”と思うほど、距離を取りたくなっていく。
その矛盾が、ずっと胸に引っかかってる。
【2】「感謝しなきゃ」の裏にある心の葛藤
“親に感謝しなきゃ”という気持ちは、たしかに正しい。
でもそれが、「義務」として心にのしかかると、逆に苦しくなってしまいます。
この葛藤には、いくつかの心理的背景があります。
■ 愛されたい気持ちと、満たされなかった記憶
親に対して「ありがとう」と思うと同時に、
「もっとこうしてほしかった」という願いが、自分の中にはまだ残っている。
それはもう昔のことかもしれないし、親も精一杯だったのかもしれない。
でも、小さい頃に「もっと認めてほしかった」「ちゃんと聞いてほしかった」という思いが、
“ありがとう”の言葉を言おうとするたび、心の奥で引き止めるのです。
■ 自分を出せなかった過去の延長線上にいる
親に対して「いい子」でいようとしてきた人ほど、
自分の本音を見せることが怖くなる。
「これ言ったら傷つけるかな」
「親不孝だって思われるかな」
そうやって自分の感情に蓋をしてきた人ほど、
“感謝”という言葉が、まるで自分の気持ちを否定する呪文のように感じられてしまう。
【3】なぜ「距離を取りたくなる」のか?
■ 親といると“昔の自分”に引き戻される
大人になって、いろんな人間関係を築いてきたのに、
親といると、なぜか急に「子ども」に戻ってしまう。
「ちゃんとしなきゃ」「怒られないように」
そんなモードが無意識にONになる。
そして、その“過去の役割”に逆らえない自分がしんどい。
だから、離れたくなる。物理的にも、感情的にも。
■ 感謝の押しつけが「縛り」になることもある
「親には感謝しないと」
「親を大事にしないとバチが当たる」
そんな社会的・文化的な圧力もある。
でも本当は、「感謝」は“自分の心が自然に生まれるもの”であって、
誰かに言われて持つものじゃない。
感謝の気持ちが強制されたとき、心はそれに反発してしまう。
「ありがとう」って言いたいのに、言えない——それが、しんどさの根っこにある。
【4】どうしたらいい?——無理に感謝しようとしないで
■ 「感謝できない自分」を責めないことから始めよう
まず、「感謝しなきゃと思うのにできない」自分を責めないでください。
それは親への反抗ではなく、「自分の気持ちに正直であろうとする誠実さ」です。
親とちゃんと向き合いたいからこそ、心がそう反応してるんです。
■ 「ありがとう」は、準備ができたときに言えばいい
感謝は、言わなきゃいけないものじゃない。
無理に口に出さなくてもいい。
あなたが本当に心からそう思えるときに、自然と出てくるものだから。
そして、もしそれが10年後だったとしても、それでいいんです。
■ 距離を取ることは“冷たい”ことじゃない
「親と距離を取る=親不孝」ではありません。
むしろ、自分の心が壊れそうなときに一歩離れることは、とても健康的な選択です。
物理的にも感情的にも、
「ここまでなら関われる」というラインを自分で持つことは、自己防衛でもあり、関係を長続きさせる知恵でもあります。
【5】まとめ
「親に感謝しなきゃ」
——その気持ちがあること自体、あなたの中に優しさがある証です。
でも同時に、
「ありがとうと言いたいのに言えない」
「近づきたいのに、距離を取りたくなる」
そんな揺れも、確かにそこにある。
それはあなたが、ちゃんと親を見て、
ちゃんと自分の心とも向き合おうとしているからこそ生まれる葛藤です。
感謝できない夜があってもいい。
近づけない時期があってもいい。
それでもいつか、
「ありがとう」が自然と出てくる日が来るかもしれない。
——だから今は、
“ありがとうが言えない自分”も、そっと許してあげてください。
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