【1】心の声「静かに積もる不安に、まだ名前をつけられない」
何がきっかけだったかも、はっきりしない。
仕事のあと、部屋の明かりをつけた瞬間かもしれない。
鏡に映る顔をふと見たときかもしれない。
久しぶりに会った友人の近況に、少し取り残された気がしたのかもしれない。
「私、このまま歳をとっていくんだな」
その言葉が、静かに胸の奥に降りてきて、息が詰まった。
誰にでも起こる自然なことのはずなのに。
避けようがない変化のはずなのに。
なぜか、ものすごく“怖い”と感じてしまった。
【2】「老い」が怖いのは、死よりも“孤独”の予感があるから
年齢を重ねることそのものが怖いというより、
その先にある“孤独”や“無力感”を想像してしまうから、心がざわつくのです。
■ 誰かと比べて「まだここにいる自分」が取り残されたように思える
- 結婚した友達、子育て中の同級生、キャリアを築いた同期
- マイホーム、昇進、家族旅行…人の人生が「正しい形」に見えてくる
そして、自分は?
「このままでいいのかな」
「何もないまま、年だけとっていくのかな」
そんな問いが、ふと心に重くのしかかる。
■ 見た目や体力の変化に、心が追いつかない
- 昔より疲れやすくなった
- 似合わなくなった服に戸惑う
- ふと鏡に映る自分が「知らない人」に見える瞬間
“老いる”という現象を、外見の変化として初めて意識するとき、
「私はまだ大丈夫」って思ってた心が小さく崩れていく。
【3】なぜ「このまま歳をとっていくのが怖い」と思うのか?
■ 「変わること」と「失うこと」がごちゃまぜになる
年齢を重ねる=何かを手放していくこと。
若さ、スピード、柔軟さ、可能性——
でも実は、「失う」だけじゃなくて「変わっていく」だけのものもある。
でも心は、それをすべて“喪失”としてカウントしてしまいがち。
■ “未来に何が待っているかわからない”ことへの不安
- この先、どうなるんだろう
- もっと孤独になっていくんじゃないか
- 自分だけ取り残されていくんじゃないか
未来は誰にもわからない。
でも、だからこそ——
「どうしようもなさ」に飲まれそうになる。
【4】どうしたらいい?——“老いていく自分”を受け止めるために
■ ① 「怖い」と思える自分を、否定しない
老いに対する不安は、弱さでも、わがままでもない。
それだけ“自分の人生をちゃんと生きたいと思っている”証拠です。
「なんとなく怖い」「理由はわからないけど不安」
そう思う自分を、責めないであげてください。
■ ② 「歳をとること=何かを失うこと」だけじゃない
- 判断がゆっくりになった分、じっくり人の話を聞けるようになった
- 派手な服を着なくても、自分に似合うものがわかるようになった
- 周りに振り回されなくなった
変化は、“深まり”でもある。
歳をとるということは、「引き算」だけじゃない。
■ ③ これからの自分に、“小さな物語”を渡していく
大きな目標や成果じゃなくていい。
「来月この映画を観に行こう」
「このカフェに行ってみよう」
「誰かに、この話をしてみよう」
そんな小さな物語が、未来に灯りをともしてくれる。
それがある限り、歳を重ねる人生も、ちゃんと“前に進んでいる”のです。
【5】まとめ
「私、このまま歳をとっていくのかな」
そんなふうに思ってしまう夜は、
“人生をちゃんと歩きたい”という静かな祈りが、心の奥で灯っている証です。
不安を感じるのは、生きているから。
先がわからないことに怯えるのは、ちゃんと未来を見ているから。
変わっていくこと、手放していくこと。
その中にある“まだ見ぬ自分”を、少しずつ迎えにいけたら——
老いることも、きっと「生きる」の一部になっていく。
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